YANAGI GAKU ARCHITECTS

URBAN CUBE  九段南

CONCEPT

江戸の切絵図を見ると広大な大名屋敷が立ち並んでいた九段下は江戸城の城下として、今なおその面影は消えることがない。皇居、千鳥ヶ淵、靖国神社へと続く空間は、単なるビジネス街としての場所というよりもその江戸から連なる歴史を感じさせる場所でもある。東京の、江戸の、都市としての歴史を色濃く残す街。それが九段下。 靖国神社の前というこれ以上はないロケーションにこの建物は計画された。低層階でも窓から見えるものは靖国の緑だけである。上層階においてはその靖国の緑を超えてすばらしい眺望が拡がる。武家屋敷の風情とお堀の水と緑が今なお色濃く残る九段、北の丸公園や武道館があり都心の一等地でありながら閑静な住宅街でもある。交通の便は良く周囲はオフィス街でもあり、また大学や専門学校も多く存在し文教地区の一面もある。そして靖国神社の境内と緑。それぞれが違ったこの多面性のある地に、様々な人が住む。その場所と人の多面性をメタファーとしてファサードに表現した。白とチョコレート色で囲まれた場所、そして亜鉛メッキリン酸塩処理パネルといった異種材料でそれは構成され、九段のそして東京の今を表現した。 内部はユニットバスを台湾に特注し、あたかも在来工法で仕上げているかのように洗面室と浴室の面を同一にしている。靖国神社に面してカーペットを敷き詰めた小上がりのある部屋や浴槽しかない特注のユニットバスの部屋、メゾネットの部屋など、各々の住戸はそのコンセプトを表現している。

DATA

計画地東京都千代田区
用途賃貸集合住宅(32戸) + テナント(2戸)
敷地面積210.32平米
延床面積1669.45平米
規模12F
構造RC造
施工(株)NIPPOコーポレーション
竣工2008.04
photo byKOBAYASHI Kenji